衆院選で自公が少数与党に転落後、初の本格論戦となった臨時国会が閉会した。
自民1強時代の強引な国会運営は影を潜めた。与野党が議論して合意を目指し、双方が納得できる法案をつくりあげるのが国会のあるべき姿だ。試金石となった今国会は、その一部が垣間見えた。
焦点は、政府の経済対策の財源となる補正予算案と、自民党の派閥裏金事件を受けた政治改革関連法案だった。いずれも与党が野党の要求を一部受け入れる形で成立している。
補正予算案は能登半島地震の復興予算を拡充した。補正予算案が国会提出後に修正され、成立したのは28年ぶりである。
政治改革では野党7党が提出した政策活動費の全廃法案などが成立した。自民党は使途公開が不要な政活費を全廃しつつ、支出先を非公開にできる「公開方法工夫支出」新設を明記した法案を提出。野党が「新たな抜け道になる」と反発し、断念に追い込まれた。
石破茂首相は閉会後、「可能な限り幅広い合意形成を図るよう努力した。熟議の国会にふさわしいものになった」と述べた。立憲民主党の野田佳彦代表は「動かなかったテーマが具体的に前進したのは一定の成果だ」とした。
真価が問われるのは次期通常国会である。積み残した課題も多い。まず企業・団体献金である。立民や日本維新の会が「政策決定をゆがめる」として禁止を主張。自民党は公開による透明性向上が重要として「企業献金が悪で、個人献金が善としない」と反論。与野党は来年3月末までに結論を得ることで合意している。
通常国会では「カネのかかる政治」のあり方や「民主主義のコストを誰が負担するのか」といった根源的な議論が欠かせない。裏金事件の真相解明も必要だ。
所得税が生じる「年収103万円の壁」が焦点となった税制改正は、減税による手取り増を掲げる国民民主党と自公の協議がまとまらなかった。自公のみで与党税制改正大綱に123万円までの非課税枠の引き上げを明記し、今後も協議が続く。代替の財源確保の問題を避けて通れないことを強く認識する必要がある。
気になるのは、国民民主や維新などとの「政治的な駆け引き」で、多数確保を図る思惑が自公にみえることだ。公開の場で全政党が議論を尽くし合意形成を図るのが筋である。「熟議」には時間がかかることを前提に、必要な議論を進めたい。