「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家、野崎幸助さん(当時77)が2018年に急性覚醒剤中毒で死亡したことをめぐり、和歌山地検は24日、殺人などの罪に問われた元妻、須藤早貴被告(28)を無罪とした和歌山地裁判決を不服として大阪高裁に控訴した。
野崎さんは18年5月に自宅で死亡しているのが見つかった。当時2人きりだった須藤被告が、致死量の覚醒剤を摂取させたとして約3年後に逮捕・起訴された。被告側は今年9月の初公判で起訴内容を否認し、一貫して無罪を主張していた。
今月12日の和歌山地裁判決は、須藤被告が覚醒剤のようなものを入手するなど、殺害を「疑わせる事情」があったと認めた一方、それらの事情から「ただちに、野崎さんに覚醒剤を摂取させたとまで推認できない」と判断。野崎さんが覚醒剤を誤って過剰摂取した可能性もないとは言い切れず、殺害したとするには「合理的な疑いが残る」と結論づけていた。
検察側は、須藤被告には、野崎さんの莫大(ばくだい)な遺産を得るという動機があり、覚醒剤を使った「完全犯罪」で殺害したと主張していた。(伊藤秀樹)