亡くなった野崎幸助さん
「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家、野崎幸助さん=当時(77)=に致死量の覚醒剤を飲ませて殺害したとして、殺人罪などに問われた元妻、須藤早貴被告(28)に無罪を言い渡した和歌山地裁の裁判員裁判判決を不服として、和歌山地検は24日、大阪高裁に控訴した。
検察側は1審で無期懲役を求刑したが、12日の地裁判決は、野崎さんが広い人脈の中で覚醒剤を入手し「初めて使用する際に誤って致死量を一度に摂取した可能性を完全に否定することはできない」と判断していた。
元妻は全面的に起訴内容を否認。元妻と犯行を結ぶ直接的な証拠はなく、間接証拠の評価で犯人性が認められるかが争点だった。
検察側は「完全犯罪」といった検索履歴に加え、元妻が野崎さんの死亡前月に薬物の密売人と接触したことや、覚醒剤を摂取したとされる時間帯に自宅で2人きりだったことなどを間接証拠にあげた。しかし、地裁はこれらは「殺害を疑わせる事情」ではあるものの不十分で、「誤飲した可能性がないとは言い切れない」と結論付けていた。
元妻は、平成30年5月24日、殺意を持って何らかの方法で野崎さんに致死量の覚醒剤を摂取させ、急性覚醒剤中毒により死亡させたとして起訴された。
元妻は9月、別の男性から現金約3千万円をだまし取ったとする詐欺罪で懲役3年6月の実刑判決が確定している。