10月末に行なわれたデモ。参加者は新撰組の衣装に扮し、横断幕を掲げた。巨大なデコトラックも動員
「暴力団の資金源になるな! オーッ!」──茨城県土浦市にある繁華街でこんな声が響き渡った。
10月末、飲食店や男性向けサービスをする店がひしめく土浦市桜町で新選組隊士の羽織袴を模した衣装を身にまとった集団がデモ行進する動画が出回っている。
動画を見ると「土浦暴力団等排除協議会」という団体の名前が見えた。また今回の「デモ行進」のなかで風俗関係の団体名が書かれた横断幕も見られた。この団体について、デモの参加者で同協議会の会員はこう話す。
「この日のデモは総勢200人ほど、地元の男性向け特殊浴場の店長や従業員などが参加しました。桜町はこれまで“無法地帯”とも言われ、路上でのキャッチによる強引な客引きが問題になっていました。
周辺の店舗や飲食店からの苦情もあり、6月4日には迷惑防止条例違反容疑で案内所、風俗店4店舗の一斉摘発がありました。こうした経緯から今後は暴力団との関係を断絶する目的でデモを行なったのです」
桜町には“北関東最大の歓楽街”があるとも言われ、JR土浦駅から歩いて10分程度の場所には、20軒以上の店が密集している。一部の店では経営者に元暴力団関係者もいたといい、無料案内所では悪質なキャッチが横行していたというが、6月の摘発を機に見かけなくなったという。
デモでは江戸時代末期、幕府に反発する逆賊を取り締まる「新選組」にも似た衣装で行進していたが、これについては何か理由があるのだろうか。
「いえ、特に意味はないですね(笑)。会の人間が新選組ファンだとか、そういうこともありません。何かデモ行進を行う際に統一感のある衣装をということであのようなデザインになっています」(同前)
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「暴力団NG」を決めたワケ
出回っている動画を見ると「全日本特殊浴場協会連合会」という関係団体の名前もある。暴力団と関係が深いとも言われてきた特殊浴場の連合会が暴排デモに参加しているのはどういった理由からなのか。その理由について、同連合会の一人はこう語った。
「参加したのは会長の強い意向を汲んでのものです。今年の夏ごろ、会長が代わってから前会長の意思を引き継ぐ形で『暴排』の意識が高まりました。かつて『歌舞伎町の風俗王』とも言われた現会長は、過去に暴力団関係者と懇意にしていた反省から、暴力団との付き合いをやめていこうという方向に舵を切っています。
これまでの特殊浴場店は、みかじめ料など直接的なものから、暴力団関係者がキャッチやスカウトの元締めといった間接的に絡んでいるものまで、半数くらいは『暴力団と関係があるのでは』と疑われる事例がありました。今後はこれをなくしていこうという思いから、デモ行進をしているのです」
かつては暴力団からのみかじめ料として「規模と地域によっては月に30万円から40万円払わなければならなかった時代もあったと聞いている」(連合会の別の会員)という。みかじめ料の支払いを拒否すると数々の嫌がらせが始まり、店の前にゴミや汚物が置かれることもあったようだ。こうした暴排運動の周知のため、今後は男性向けのそうした店が立ち並ぶ地域で、同様のデモを計画しているという。
「暴排条例が施行されてからは露骨な嫌がらせは減りましたが、今でも書面などが送りつけられ『夜道や駅のホームでは気を付けて歩いたほうがいい』というような、脅迫にはならない巧妙な文面が来ることがあります。デモは11月21日に池袋で同様の行進を行ないましたが、今後も繁華街でのデモ行進を予定しています」(前出・連合会の会員)
連綿と続いてきた「大人向けの店と暴力団の関係」は令和に断ち切れるか。