住友電工・田村和希が復活の3区区間賞!最長2区はKao・池田耀平、6区はGMO・島津が区間トップ/ニューイヤー駅伝 | 月陸Online|月刊陸上競技

住友電工・田村和希が復活の3区区間賞!最長2区はKao・池田耀平、6区はGMO・島津が区間トップ/ニューイヤー駅伝

◇第69回全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝/1月1日、群馬県庁発着・7区間100km)

ニューイヤー駅伝が行われ、旭化成が4時間47分32秒で5年ぶり26回目の優勝を果たした。

旭化成に勢いをつけたのが1区の長嶋幸宝。前回も高卒ルーキーながら1区を任されたが、転倒の影響もあり、13位とほろ苦いニューイヤー駅伝デビューとなった。「絶対に区間賞を取る」と雪辱を誓った今回は、「チャンスを待って、時が来たら仕掛けよう」と残り1kmを切ったところでスパート。接戦を制して、初の区間賞を獲得した。

最長区間の2区を制したのが、Kaoの池田耀平。10km手前で差し込みがあったが、「足は動いていて、鈴木芽吹君と競り合いながら、ある程度、速いペースでハマっていく感覚はあったので、最後まで我慢はできたと思います」。最後までペースは落ちることがなく、区間記録まであと8秒に迫る1時間1分48秒の快走を見せた。

3区では住友電工の田村和希が13位から4位まで順位を押し上げ、チームの初入賞(6位)に大きく貢献した。

前半は三菱重工の井上大仁らと競り合う展開となったが、「競っている感じはなくて、自分のペースで淡々と走っていました」と自分の走りを貫く。「何人も抜くことができたので、最後はきつかったですけど、気持ち良く、楽しく走れました」と後半に入って、ペースが落ちてきた選手を次々と捕らえた。

21年東京五輪代表を懸けた20年12月の日本選手権10000mで当時日本歴代3位の27分28秒92をマーク。そこからは苦しい時期が続いたが、久しぶりに日の目を浴びた。

「初めてこんなに笑顔でニューイヤー駅伝を終えられたと思います。久しぶりに駅伝でチームの結果がうれしいなという思いになりました」と話した田村。青学大時代には箱根駅伝4連覇を経験しており、“駅伝男”復活を印象づけた。

4区と5区ではHonda勢が連続で区間賞を獲得。4区のイェゴン・ヴィンセントは5位から2人を抜いて、3位に順位を押し上げた。

東京国際大時代には箱根駅伝で2~4区の3区間で区間記録を樹立。「たくさん準備していて、いけると思ったので、うれしいです」と喜びがあふれた。

5区では「自分のところで勝負を決めたいと思っていました」という青木涼真が48秒差を逆転して首位に浮上。「自分の思い描いていた走りができました」と11.3kmでトヨタ自動車・西山雄介を抜いてトップに立つと、6.5kmから終盤まで競り合っていた旭化成・大六野秀畝を振り切り、10秒差をつけた。

6区ではHondaと旭化成が激しい首位争いを繰り広げるなか、単独4位で走っていたGMOインターネットグループの嶋津雄大が区間賞を獲得した。

前回は向かい風に苦戦して区間29位。順位を4位から8位に落としていた。

リベンジに燃えていたこの1年は、フォームの改善やウエイトトレーニングなどで風に耐えられえる走りを確立。「自分の走りが早くしたいという、ワクワクした感情で走ることができました」と自信を持って臨むことができていた。

今回は一人旅の中でも快調な走りを続けてリベンジに成功。「この1年間、昨年の悔しさを晴らすという思いで過ごしてきて、それが報われて本当にうれしいです」と笑顔を見せた。

7区では28人が従来の区間記録を更新。区間賞に輝いたのはHondaとのスパート合戦を制して優勝に導いた旭化成の井川龍人だった。

「30秒から1分なら追いつける自信があった」という井川はHondaと12秒差でスタート。4.6kmでHondaの中山顕に追いつくと、前に出たい気持ちを抑えながら後ろで力を溜める。

「得意なスパートで離すということを実現することができました」と残り500mほどで仕掛けると、中山を引き離して、トップでフィニッシュテープを切った。

今年は東京世界選手権イヤー。元日に弾みをつけた選手たちの今後が楽しみだ。

文/馬場 遼

◇第69回全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝/1月1日、群馬県庁発着・7区間100km) ニューイヤー駅伝が行われ、旭化成が4時間47分32秒で5年ぶり26回目の優勝を果たした。 旭化成に勢いをつけたのが1区の長嶋幸宝。前回も高卒ルーキーながら1区を任されたが、転倒の影響もあり、13位とほろ苦いニューイヤー駅伝デビューとなった。「絶対に区間賞を取る」と雪辱を誓った今回は、「チャンスを待って、時が来たら仕掛けよう」と残り1kmを切ったところでスパート。接戦を制して、初の区間賞を獲得した。 最長区間の2区を制したのが、Kaoの池田耀平。10km手前で差し込みがあったが、「足は動いていて、鈴木芽吹君と競り合いながら、ある程度、速いペースでハマっていく感覚はあったので、最後まで我慢はできたと思います」。最後までペースは落ちることがなく、区間記録まであと8秒に迫る1時間1分48秒の快走を見せた。 3区では住友電工の田村和希が13位から4位まで順位を押し上げ、チームの初入賞(6位)に大きく貢献した。 前半は三菱重工の井上大仁らと競り合う展開となったが、「競っている感じはなくて、自分のペースで淡々と走っていました」と自分の走りを貫く。「何人も抜くことができたので、最後はきつかったですけど、気持ち良く、楽しく走れました」と後半に入って、ペースが落ちてきた選手を次々と捕らえた。 21年東京五輪代表を懸けた20年12月の日本選手権10000mで当時日本歴代3位の27分28秒92をマーク。そこからは苦しい時期が続いたが、久しぶりに日の目を浴びた。 「初めてこんなに笑顔でニューイヤー駅伝を終えられたと思います。久しぶりに駅伝でチームの結果がうれしいなという思いになりました」と話した田村。青学大時代には箱根駅伝4連覇を経験しており、“駅伝男”復活を印象づけた。 4区と5区ではHonda勢が連続で区間賞を獲得。4区のイェゴン・ヴィンセントは5位から2人を抜いて、3位に順位を押し上げた。 東京国際大時代には箱根駅伝で2~4区の3区間で区間記録を樹立。「たくさん準備していて、いけると思ったので、うれしいです」と喜びがあふれた。 5区では「自分のところで勝負を決めたいと思っていました」という青木涼真が48秒差を逆転して首位に浮上。「自分の思い描いていた走りができました」と11.3kmでトヨタ自動車・西山雄介を抜いてトップに立つと、6.5kmから終盤まで競り合っていた旭化成・大六野秀畝を振り切り、10秒差をつけた。 6区ではHondaと旭化成が激しい首位争いを繰り広げるなか、単独4位で走っていたGMOインターネットグループの嶋津雄大が区間賞を獲得した。 前回は向かい風に苦戦して区間29位。順位を4位から8位に落としていた。 リベンジに燃えていたこの1年は、フォームの改善やウエイトトレーニングなどで風に耐えられえる走りを確立。「自分の走りが早くしたいという、ワクワクした感情で走ることができました」と自信を持って臨むことができていた。 今回は一人旅の中でも快調な走りを続けてリベンジに成功。「この1年間、昨年の悔しさを晴らすという思いで過ごしてきて、それが報われて本当にうれしいです」と笑顔を見せた。 7区では28人が従来の区間記録を更新。区間賞に輝いたのはHondaとのスパート合戦を制して優勝に導いた旭化成の井川龍人だった。 「30秒から1分なら追いつける自信があった」という井川はHondaと12秒差でスタート。4.6kmでHondaの中山顕に追いつくと、前に出たい気持ちを抑えながら後ろで力を溜める。 「得意なスパートで離すということを実現することができました」と残り500mほどで仕掛けると、中山を引き離して、トップでフィニッシュテープを切った。 今年は東京世界選手権イヤー。元日に弾みをつけた選手たちの今後が楽しみだ。 文/馬場 遼

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旭化成5年ぶり優勝!Honda2位、トヨタ自動車3位 GMOが過去最高4位、住友電工が初入賞/ニューイヤー駅伝

◇第69回全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝/1月1日、群馬県庁発着・7区間100km)

ニューイヤー駅伝が行われ、旭化成が4時間47分32秒で5年ぶりのV。歴代最多優勝回数を「26」に伸ばした。

1区で高卒2年目の長嶋幸宝がトップ中継を果たすと、2区で茂木圭次郎が4位と粘り、3区のパリ五輪10000m代表・葛西潤でトヨタ自動車とのトップ争いに持ち込む。

4区以降は2位での中継が続いたが、首位がトヨタ自動車からHondaに入れ替わる中でも優勝争いの位置をキープする。

そして、アンカー・井川龍人がHondaの中山顕に4.6kmで並ぶと、そこから延々と続いたデッドヒートに残り500mからのスパートで決着をつけた。

Hondaは8秒差の2位となり、2年ぶりの王座奪還はならず。だが、5位でタスキを受けたイェゴン・ヴィンセントの区間賞で追い上げムードを作ると、5区・青木涼真が首位のトヨタ自動車との48秒差を跳ね返して首位を奪取。大いに見せ場を作った。

連覇を目指したトヨタ自動車は3位。2区のルーキー・鈴木芽吹が区間2位・10人抜きと奮闘すると、2位でタスキを受けた太田智樹が旭化成・葛西潤とのパリ五輪10000m代表対決を制してトップに立つ。5区の西山雄介が差し込み(脇腹の痛み)に苦しんで失速したことで優勝争いから後れを取ったが、王者としての底力を示した。

4位はGMOインターネットグループ。12月の福岡国際マラソンを日本歴代3位の2時間5分16秒で制した吉田祐也が1区4位で流れを作ると、2区の今江勇人が序盤からライバルチームとの競り合いの中でも最後までトップの座を譲らない力走を見せる。その後はトップ3から後退したものの、過去2度の5位を上回るチーム最高順位でフィニッシュした。

地元・SUBARUが、3年前の2位に次ぐ好成績となる5位を占めた。順大卒のスーパールーキー・三浦龍司がパリ五輪3000m障害8位入賞の実力を示し、トップと2秒差の3位で流れを作る。その後も入賞ラインで戦い抜き、東農大卒のルーキー・並木寧音が最終区で7位から2人抜きの力走を見せ、締めくくった。

8年連続11回目の挑戦で、住友電工が初入賞となる6位に食い込む。3区の田村和希が13位から9人抜きの区間賞で一気に4位へ浮上すると、日本人のみのオーダーで入賞ラインを死守した。

7位は三菱重工で5年連続の入賞を確保。8位は富士通で、前年9位から2年ぶりの入賞復帰を果たした。

◇第69回全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝/1月1日、群馬県庁発着・7区間100km) ニューイヤー駅伝が行われ、旭化成が4時間47分32秒で5年ぶりのV。歴代最多優勝回数を「26」に伸ばした。 1区で高卒2年目の長嶋幸宝がトップ中継を果たすと、2区で茂木圭次郎が4位と粘り、3区のパリ五輪10000m代表・葛西潤でトヨタ自動車とのトップ争いに持ち込む。 4区以降は2位での中継が続いたが、首位がトヨタ自動車からHondaに入れ替わる中でも優勝争いの位置をキープする。 そして、アンカー・井川龍人がHondaの中山顕に4.6kmで並ぶと、そこから延々と続いたデッドヒートに残り500mからのスパートで決着をつけた。 Hondaは8秒差の2位となり、2年ぶりの王座奪還はならず。だが、5位でタスキを受けたイェゴン・ヴィンセントの区間賞で追い上げムードを作ると、5区・青木涼真が首位のトヨタ自動車との48秒差を跳ね返して首位を奪取。大いに見せ場を作った。 連覇を目指したトヨタ自動車は3位。2区のルーキー・鈴木芽吹が区間2位・10人抜きと奮闘すると、2位でタスキを受けた太田智樹が旭化成・葛西潤とのパリ五輪10000m代表対決を制してトップに立つ。5区の西山雄介が差し込み(脇腹の痛み)に苦しんで失速したことで優勝争いから後れを取ったが、王者としての底力を示した。 4位はGMOインターネットグループ。12月の福岡国際マラソンを日本歴代3位の2時間5分16秒で制した吉田祐也が1区4位で流れを作ると、2区の今江勇人が序盤からライバルチームとの競り合いの中でも最後までトップの座を譲らない力走を見せる。その後はトップ3から後退したものの、過去2度の5位を上回るチーム最高順位でフィニッシュした。 地元・SUBARUが、3年前の2位に次ぐ好成績となる5位を占めた。順大卒のスーパールーキー・三浦龍司がパリ五輪3000m障害8位入賞の実力を示し、トップと2秒差の3位で流れを作る。その後も入賞ラインで戦い抜き、東農大卒のルーキー・並木寧音が最終区で7位から2人抜きの力走を見せ、締めくくった。 8年連続11回目の挑戦で、住友電工が初入賞となる6位に食い込む。3区の田村和希が13位から9人抜きの区間賞で一気に4位へ浮上すると、日本人のみのオーダーで入賞ラインを死守した。 7位は三菱重工で5年連続の入賞を確保。8位は富士通で、前年9位から2年ぶりの入賞復帰を果たした。

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旭化成「チームワークの勝利」1区で流れを引き寄せ、アンカー勝負で26度目V/ニューイヤー駅伝

◇第69回全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝/1月1日、群馬県庁発着・7区間100km)

ニューイヤー駅伝が行われ、旭化成が4時間47分32秒で5年ぶりの優勝を飾った。

「僕、こういうレースは得意なんですよ。誰かの後ろについて走るのも、スピード勝負に持ち込むのも」

旭化成のアンカー・井川龍人は、平然とした顔でさらりと言ってのけた。

先頭を行くHondaの中山顕から12秒遅れの2位で伊勢崎市西久保町の第6中継所をスタートした7区(15.6km)の井川は、新春の陽光を遮るようにサングラス姿。一路西へ向かう国道50号線は、右前方から赤城おろしが吹きつけていた。

「風が強いので、早い段階で(先頭に)追いついて、余裕を持って走ろう」と考えた井川だが、実際に中山を捕らえたのは4.6km付近。思っていた以上にじっくりと時間をかけ、そこから10km余は中山の後ろで待機した。「何度も『前に出たい』と思ったんですけど、確実に優勝できるまで溜めようと、我慢しました」。

中山もHondaが2022、23年に連覇した時、連続6区で優勝に貢献したチームの中軸ランナー。だが、昨年11月末の八王子ロングディスタンス10000mで27分39秒05の自己新を出し、「スピードの切れ」を武器にしてアンカーに起用された入社2年目の井川に、ここは分があった。

後ろにピタリとつかれた中山の心中は、穏やかではなかっただろう。それも延々10kmと、長い駆け引きだ。井川は「何度か中山さんが横に来たんですけど、自分も意地を張って『絶対に前へ出ないぞ』と思っていました」と明かす。

額に汗を滲ませ、苦悶の表情で前を走る中山と、後ろで「ついて行くのは楽でした」と言う井川。もっと早くに決着をつけることは可能だったろうが、時に勝負は非情な場面を映し出す。

井川が満を持して中山の前に出たのが、15km地点を過ぎて、残り600mを切ってから。真正面に群馬県庁のフィニッシュ地点を見ながら、あっという間に8秒の差をつけ、井川は4時間47分32秒で優勝テープを切った。旭化成にとって5年ぶり。最多優勝回数をまた1つ積み上げて「26」とした。

昨年は長嶋幸宝、葛西潤、井川とルーキー3人を起用して3位だった旭化成。人材豊富なチームの中で、今年もその「入社2年目トリオ」がメンバー入りを果たし、2年連続1区(12.3km)の長嶋が区間賞で流れを作った。

兵庫・西脇工高卒19歳で1区を任された昨年の長嶋は、終盤に転倒して13位。「この1年間、悔しい思いを晴らそうと、絶対に区間賞を取ることを頭に置いてやってきました」と力を込めて話す長嶋の有言実行だった。

2021年東京五輪10000m代表の相澤晃が脚の故障で補欠に回った中で、昨年のパリ五輪10000m代表の葛西もやはり脚の故障から復帰途上だったが、2区で4位へ下げた順位を3区(15.3km)でしっかりと2位へ押し戻し、後半へとつないだ。

旭化成、Honda、トヨタ自動車というトップ3のチームは昨年と変わらず。その中で今回、旭化成が勝てたのは、2年目トリオだけでなくメンバー全員がミスなく走ったからだろう。これが駅伝では難しい。体調不良の西村功監督に代わって優勝会見の場に臨んだ宗猛総監督は「チームワークの勝利です」と、極めてシンプルな言い方で勝因を挙げた。

昨年、優勝の立役者になった太田智樹が3区で首位に躍り出た時にはトヨタ自動車の連覇が見え、5年連続5区の青木涼真が勇躍トップに立った時にはHondaの2年ぶり優勝が見え始めた。

ところが、両チームとも流れが途切れる区間があり、アンカー勝負になることを見越して最終区に井川を置いた旭化成の区間配置が的中した。

宗総監督は「相澤抜きで勝ったことが大きい」と話し、「来年以降はもっとレベルの高いレースができるように、チーム内で切磋琢磨したい」と、古豪復活を高らかに宣言した。

◇第69回全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝/1月1日、群馬県庁発着・7区間100km) ニューイヤー駅伝が行われ、旭化成が4時間47分32秒で5年ぶりの優勝を飾った。 「僕、こういうレースは得意なんですよ。誰かの後ろについて走るのも、スピード勝負に持ち込むのも」 旭化成のアンカー・井川龍人は、平然とした顔でさらりと言ってのけた。 先頭を行くHondaの中山顕から12秒遅れの2位で伊勢崎市西久保町の第6中継所をスタートした7区(15.6km)の井川は、新春の陽光を遮るようにサングラス姿。一路西へ向かう国道50号線は、右前方から赤城おろしが吹きつけていた。 「風が強いので、早い段階で(先頭に)追いついて、余裕を持って走ろう」と考えた井川だが、実際に中山を捕らえたのは4.6km付近。思っていた以上にじっくりと時間をかけ、そこから10km余は中山の後ろで待機した。「何度も『前に出たい』と思ったんですけど、確実に優勝できるまで溜めようと、我慢しました」。 中山もHondaが2022、23年に連覇した時、連続6区で優勝に貢献したチームの中軸ランナー。だが、昨年11月末の八王子ロングディスタンス10000mで27分39秒05の自己新を出し、「スピードの切れ」を武器にしてアンカーに起用された入社2年目の井川に、ここは分があった。 後ろにピタリとつかれた中山の心中は、穏やかではなかっただろう。それも延々10kmと、長い駆け引きだ。井川は「何度か中山さんが横に来たんですけど、自分も意地を張って『絶対に前へ出ないぞ』と思っていました」と明かす。 額に汗を滲ませ、苦悶の表情で前を走る中山と、後ろで「ついて行くのは楽でした」と言う井川。もっと早くに決着をつけることは可能だったろうが、時に勝負は非情な場面を映し出す。 井川が満を持して中山の前に出たのが、15km地点を過ぎて、残り600mを切ってから。真正面に群馬県庁のフィニッシュ地点を見ながら、あっという間に8秒の差をつけ、井川は4時間47分32秒で優勝テープを切った。旭化成にとって5年ぶり。最多優勝回数をまた1つ積み上げて「26」とした。 昨年は長嶋幸宝、葛西潤、井川とルーキー3人を起用して3位だった旭化成。人材豊富なチームの中で、今年もその「入社2年目トリオ」がメンバー入りを果たし、2年連続1区(12.3km)の長嶋が区間賞で流れを作った。 兵庫・西脇工高卒19歳で1区を任された昨年の長嶋は、終盤に転倒して13位。「この1年間、悔しい思いを晴らそうと、絶対に区間賞を取ることを頭に置いてやってきました」と力を込めて話す長嶋の有言実行だった。 2021年東京五輪10000m代表の相澤晃が脚の故障で補欠に回った中で、昨年のパリ五輪10000m代表の葛西もやはり脚の故障から復帰途上だったが、2区で4位へ下げた順位を3区(15.3km)でしっかりと2位へ押し戻し、後半へとつないだ。 旭化成、Honda、トヨタ自動車というトップ3のチームは昨年と変わらず。その中で今回、旭化成が勝てたのは、2年目トリオだけでなくメンバー全員がミスなく走ったからだろう。これが駅伝では難しい。体調不良の西村功監督に代わって優勝会見の場に臨んだ宗猛総監督は「チームワークの勝利です」と、極めてシンプルな言い方で勝因を挙げた。 昨年、優勝の立役者になった太田智樹が3区で首位に躍り出た時にはトヨタ自動車の連覇が見え、5年連続5区の青木涼真が勇躍トップに立った時にはHondaの2年ぶり優勝が見え始めた。 ところが、両チームとも流れが途切れる区間があり、アンカー勝負になることを見越して最終区に井川を置いた旭化成の区間配置が的中した。 宗総監督は「相澤抜きで勝ったことが大きい」と話し、「来年以降はもっとレベルの高いレースができるように、チーム内で切磋琢磨したい」と、古豪復活を高らかに宣言した。

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◇第101回箱根駅伝・往路(東京・大手町~神奈川・箱根町/5区間107.5km)

1月2日、3日に行われる第101回箱根駅伝の往路の当日区間変更が発表された。

2連覇を狙う青学大は2区・黒田朝日(3年)、4区・太田蒼生(4年)を配置。3区に今季絶好調の鶴川正也(4年)、5区に前回区間2位の若林宏樹(同)が控える強力な布陣だ。

2年ぶり王座奪還を狙う駒大は3、5区を変更し、帰山侑大(3年)、篠原倖太朗(4年)、谷中晴(1年)、桑田駿介(1年)、山川拓馬(3年)のオーダーとなった。

3冠を狙う國學院大は1区に出雲、全日本で区間賞の野中恒亨(2年)、4区に青木瑠郁(3年)にそれぞれ変更している。

このほか、有力校では創価大は2区に吉田響(4年)、3区にスティーブン・ムチーニ(2年)を並べ、中大は1区に吉居駿恭(3年)を置いた。20年連続シードが懸かる東洋大は1区・石田洸介(4年)と梅崎蓮(同)が当日変更で外れている。

往路は午前8時にスタートする。

◇第101回箱根駅伝・往路(東京・大手町~神奈川・箱根町/5区間107.5km) 1月2日、3日に行われる第101回箱根駅伝の往路の当日区間変更が発表された。 2連覇を狙う青学大は2区・黒田朝日(3年)、4区・太田蒼生(4年)を配置。3区に今季絶好調の鶴川正也(4年)、5区に前回区間2位の若林宏樹(同)が控える強力な布陣だ。 2年ぶり王座奪還を狙う駒大は3、5区を変更し、帰山侑大(3年)、篠原倖太朗(4年)、谷中晴(1年)、桑田駿介(1年)、山川拓馬(3年)のオーダーとなった。 3冠を狙う國學院大は1区に出雲、全日本で区間賞の野中恒亨(2年)、4区に青木瑠郁(3年)にそれぞれ変更している。 このほか、有力校では創価大は2区に吉田響(4年)、3区にスティーブン・ムチーニ(2年)を並べ、中大は1区に吉居駿恭(3年)を置いた。20年連続シードが懸かる東洋大は1区・石田洸介(4年)と梅崎蓮(同)が当日変更で外れている。 往路は午前8時にスタートする。

往路出走メンバーをチェック!

●青学大 宇田川瞬矢(3年)-黒田朝日(3年)-鶴川正也(4年)-太田蒼生(4年)-若林宏樹(4年) ●駒大 帰山侑大(3年)-篠原倖太朗(4年)-谷中晴(1年)-桑田駿介(1年)-山川拓馬(3年) ●城西大 久保出雄太(4年)-V.キムタイ(3年)-平林樹(4年)-林晃耀(4年)- 斎藤将也(3年) ●東洋大 小林亮太(4年)- 緒方澪那斗(3年)- 迎暖人(1年) -岸本遼太郎(3年)- 宮崎優(1年) ●國學院大 野中恒亨(2年)-平林清澄(4年)-山本歩夢(4年)- 青木瑠郁(3年) -高山豪起(3年) ●法大 武田和馬(4年)-小泉樹(4年)-矢原倖瑛(3年)-花岡慶次(3年)-野田晶斗(2年) ●早大 間瀬田純平(3年)-山口智規(3年)-山口竣平(1年)-長屋匡起(2年)-工藤慎作(2年) ●創価大 齊藤大空(2年)- 吉田響(4年)- S.ムチーニ(2年)-野沢悠真(3年)- 山口翔輝(1年) ●帝京大 島田晃希(3年)-山中博生(4年)-柴戸遼太(3年)-尾崎仁哉(3年)-楠岡由浩(2年) ●大東大 大濱逞真(1年) -棟方一楽(2年)-入濵輝大(3年)-西代雄豪(4年)-中澤真大(1年) ●立大 吉屋佑晟(3年)-馬場賢人(3年)-稲塚大祐(4年)-林虎大朗(4年)-山本羅生(4年) ●専大 新井友裕(3年)-D.マイナ(1年)-上山詩樹(2年)―和田晴之(2年)-手塚太一(3年)- 田口萩太(1年) ●山梨学大 平八重充希(3年)-J.ムトゥク(3年)- 村上大樹(4年)-高橋楓河(1年)- 和田瑛登(2年) ●日体大 平島龍斗(3年)-山崎丞(3年)-富永椋太(4年)-田島駿介(3年)-浦上和樹(3年) ●中央学大 堀田晟礼(4年)-吉田礼志(4年)-前原颯斗(2年)-市川大世(2年) -太田翔(4年) ●中大 吉居駿恭(3年)-溜池一太(3年)-本間颯(2年)-白川陽大(3年)-園木大斗(4年) ●日大 安藤風羽(4年)-S.キップケメイ(2年)-冨田悠晟(3年) -大仲竜平(3年)-鈴木孔士(3年) ●東京国際大 木村海斗(4年)-R.エティーリ(2年)-佐藤榛紀(4年)-大林洸己(4年)-楠木悠人(4年) ●神奈川大 大岩蓮(2年)-宮本陽叶(3年)-酒井健成(3年)-近藤大智(2年)-三原涼雅(2年) ●順大 浅井皓貴(4年)-玉目陸(1年)-海老澤憲伸(4年)-堀越翔人(4年)-川原琉人(1年) ●関東学生連合 片川祐大(亜細亜大4年)-森川蒼太(流経大4年)-小山洋生(筑波大3年)-溝上稜斗(明大4年)-佐藤我駆人(駿河台大1年)

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