「ラグビーも受験もベストを尽くす」と話す木川海選手=宮城県登米市の県立佐沼高で2024年12月23日午後3時40分、早川健人撮影
第104回全国高校ラグビー大会が27日に東大阪市花園ラグビー場で開幕する。花園は高校ラグビーの聖地。全国の有力女子選手たちが東西に分かれて戦う「U18(18歳以下)花園女子15人制」も行われる。東軍CTBの木川海(きかわうみ)選手(宮城・佐沼3年)は約3週間後に大学入学共通テストを控えながらもラグビーと受験を両立させ「県決勝で敗れた男子のみんなの思いも背負ってタックルしたい」と意気込んでいる。
ラグビースクールのコーチをしていた父の勧めで、5歳で競技を始めた。「『サッカーをしたい』と言ったら、父にラグビーを見せられて『これがサッカーだよ』とだまされた」と笑う。中学生時は陸上部も兼ね、宮城県登米市の大会では100メートルと200メートルで優勝した。県立の進学校である佐沼に入学後は県内の女子クラブチームで試合に出る一方、男子部員たちと練習を重ねた。「おかげで強度がある練習を積めた」と感謝する。
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男子は6月の県高校総体では花園常連の仙台育英に勝って注目を浴びたが、10月の県予選決勝では完封され、花園への切符を逃した。ベンチ近くでマネジャー役を務めていた木川選手も号泣した。同級生の男子部員たちは負ければ引退で「もう一緒に練習できないと思うと悲しかったし、悔しかった」と振り返る。
自身は7人制のU18日本選抜に選ばれて、この12月8日から16日までニュージーランドに遠征した。集合した成田空港でコーチに「主将をお願いしたいけれど、いいかな?」と聞かれた時は「自分で大丈夫かな」と驚いたが、現地で行われた国際大会では優勝候補のニュージーランドとオーストラリアを破って優勝した。SHやSOで全7試合に先発出場した木川選手は優秀選手に当たる「ドリームセブン」にも選ばれた。「チーム全体で目指した速く、低く、激しいラグビーを体現できた。前年の日本は準優勝と聞いていたので、超えられて本当にうれしかった」とほほ笑んだ。
「将来は途上国援助の仕事に就きたい」とラグビー推薦の話は全て断り、国立大への進学を目指している。ニュージーランドへの遠征中も時間を見つけて参考書を広げ、帰国してすぐの21、22日は大学入学共通テストの模擬試験を受けた。「自分で選んだ道だから、頑張れる」と言い切る。開会式直後の大観衆を前に、憧れの花園第1グラウンドでプレーすることが「とても楽しみ」という。
「夢は7人制の女子日本代表に選ばれて、4年後のロサンゼルス五輪でメダルを取ること」と目を輝かせる。佐沼の白鳥直人監督(54)は「定期試験でも学年トップクラスを維持する頑張り屋。勉強とラグビーと両方の夢を実現してほしい」とエールを送る。【早川健人】