2024年12月29日午前、韓国南部・務安(ムアン)空港に着陸しようとして失敗、炎上したチェジュ航空機(写真・ソウル新聞)
韓国南部・全羅(チョルラ)南道の務安(ムアン)国際空港で、乗客181人を乗せた韓国・チェジュ航空の旅客機が着陸中に滑走路外壁に衝突、火災が発生して乗員・乗客151人(12月29日午後5時時点)が死亡したことが確認された。 胴体の大部分が燃えたため犠牲者はさらに増えそうだ。また、火災により損傷が激しく、肉眼で身元確認が難しい遺体もあるという。 ■胴体着陸した速度落とせず 2024年12月29日、韓国消防庁によると、同日午前9時3分ごろ、タイ・バンコク発のチェジュ航空7C2216便の旅客機が務安空港滑走路に胴体着陸を試みようとして、事故が発生した。
旅客機は滑走路の端に達するまで速度を落せず、滑走路端の外壁構造物に衝突。胴体が破損して爆発が起こり、火災が発生した。 事故機の機種はボーイング社のB737-800で、乗客175人と乗務員6人の計181人が乗っていた。このうち韓国人乗客が173人、タイ人乗客が2人とされている。 消防当局は午前9時46分頃に初期消火を終え、機体尾翼(後部)側から負傷者2人を相次いで救助した。負傷者2人はいずれも乗務員で、命に別状はないという。
消防当局は午後3時18分現在、遺体を収容した死亡者は124人だと発表した。現場には臨時安置所が設置された。 チェジュ航空7C2216便は12月24日午前1時30分頃にバンコクを出発し、午前8時30分頃に務安空港に到着する予定だった。 予定された到着時間に務安空港第1滑走路に接近して最初の着陸を試みようとしたが、正常な着陸に失敗したため、「ゴーアラウンド」(着陸復行、航空機が着陸やそのための滑走路進入を取りやめ再び上昇しようとすること)しようとしたところ、事故が発生した。
■「右側エンジンに鳥、炎上」証言 韓国・国土交通省は事故発生後にブリーフィングを行い、「バードストライク(鳥がエンジン内に吸い込まれる現象)やランディングギアの誤動作など、複数の事故原因が推定されるが、今後の調査を実施してみないと原因がわからない」という。 事故旅客機が着陸前に鳥の群れと衝突した後、エンジンに異常が発生したように見えたという目撃証言もある。 韓国の通信社・聯合ニュースによると、12月29日午前、務安空港近くの海辺で釣りをしていたチョン・ジョンモさん(50)は、事故旅客機が滑走路に着陸しようと下降中、反対側から飛んできた鳥の群れと正面衝突する状況を目撃したという。
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一部の鳥がエンジンに吸い込まれたように2~3回、「ポン」という音とともに右側のエンジンから炎が見えたとチョンさんは説明する。旅客機は再び上昇したが、高く上がれなかったようだとも証言している。 これまで複数のメディアが報道した事故映像では、空港上空を通過した機体の右側から瞬間的に火花と煙が噴出する様子がわかっている。 国土交通省のチュ・ジョンワン航空政策室長は12月29日、同日午前8時57分ごろに務安空港の管制塔が事故機にバードストライクへの警告を出し、その1分後の午前8時58分に事故機の機長が遭難信号「メーデー」を要請したという。
事故機のフライトレコーダーは回収され、ボイスレコーダーは現場の状況をみながら回収するという。 一方で、事故原因は務安空港の滑走路の短さという指摘が出ていた。しかし、同空港の滑走路の長さは2800メートルであり、着陸には十分な距離であり、それで事故が起きたとは考えにくいと国土交通省は明らかにした。 事故機の機長の飛行経歴は6823時間、副機長は1650時間だ。今回の事故の正確な原因が明らかになるまでには、数カ月から数年かかるものとみられている。
■地元では国際線利用で人気の空港 全羅南道消防本部は同日、務安空港庁舎で搭乗者家族に対する説明で、「塀と衝突した後、機体から乗客が飛び出した。生存可能性はほとんどない」と述べた。 務安空港がある全羅南道や光州市には光州空港があるが、ここは国内線のみ就航しており、同地域から国際線を利用できる最も近い場所が務安空港となる。 仁川国際空港など他の国際空港まで行く必要がなく、空港の駐車場も無料で利用できるため、地域住民から利用しやすい空港でもある。
とくに12月8日からはタイのバンコクや日本の長崎、台湾の台北、マレーシアのコタキナバルなどへの運航も開始した。利用客数も2023年には25万人となり、2024年は10月までの利用者が28万人となっていた。
ソウル新聞