各国政府は、国民が1日にさまざまな食品を食べ水を飲んでも、トータルの推定摂取量がこのADIを超えないことを確認したうえで、各食品における農薬や食品添加物の基準、栽培時の農薬の使ってよい作物、使い方、使う量や、食品加工時の添加物の使い方など、ルールを非常に細かく定めています。
また、残留農薬や添加物の基準値は、子どものことを考えて決められていないのでは? とよく尋ねられます。そんなことはありません。
子どもへの影響は入念に検査されている
たとえば、農薬においては動物を用いて、妊娠前からオス、メス両方に農薬を食べさせて出産後も離乳するまで投与し続け、親と子に出る毒性を調べる「2世代繁殖毒性試験」が行われます。
妊娠期にずっと食べさせて胎児の死亡や奇形、発達遅延が起きないかなどをみる「発生毒性試験」「催奇形性試験」、妊娠動物に農薬成分を投与し続け、生まれてきた子どもの脳の発達、学習能、性成熟などを調べる「発達神経毒性試験」なども行われ、どの試験でも毒性が見出されない「無毒性量」を決定します。
そのうえで、動物とヒトの違い、ヒトにおける個人差、つまり子どもから高齢者までという年齢や障害の有無などの違いも加味した「安全係数」で無毒性量を割って、ADIを決定します。
子どもへの影響も入念に考慮されているのです。実際の食品を分析した調査でも、子どもの摂取量はADIよりかなり低いことがわかっています。
著者:松永 和紀