公開日:2024/12/21 06:00 更新日:2024/12/21 06:00
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あら、変わった本屋さん。と見つけたのはコロナ禍後期だった。シェア型書店がまだまだ珍しかった2022年3月、神保町での、その最初の店としてオープンした。今やお客がひっきりなし。すずらん通りの名所化している。 ホームページを見て、仏文学者の鹿島茂さん経営の店と思いきや、若干ニュアンスが違った。リクルート出身で、アーカイブの書評サイト「オールレビューズ」を運営する次男の由井緑郎さん(42)が代表で、「僕の持つ“資源”を最大に生かしてできることを、と始めました」とおっしゃる。 「ん? 資源とはお父さまのことですか?」 「はい、そうです」 新感覚の用語づかいに驚いたが、開店経緯を聞いて膝を打った。
「埋もれちゃってる、先人たちが書いた品質の良い書評をデータ化して読めるようにと立ち上げたのが『オールレビューズ』ですが、ここはその実店舗版なんです」と。
そうそうたる作家らが書評した本と著作がずらり
「PASSAGE By ALL REVIEWS」/(C)日刊ゲンダイ
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棚は362ある。そのうち多数が、そうそうたる作家や研究者らの棚で、書評した本と、彼らの著作が並ぶ仕組みだ。
約60平方メートル。足を踏み入れるや否や、右手に、新刊「上野がすごい」を面陳列した柳瀬博一さんの棚。「関東大震災がつくった東京」「小泉今日子の音楽」などを書評なさったのね……と拝見。上下左右、後ろの棚に目をやるに、四方田犬彦、中島京子、原武史、大竹昭子。
心の中で「すごいすごい」と叫びながら進むと、うわー荒俣宏だ、内田樹だ、俵万智だ、谷川渥だ、井上ひさし(遺族が出店)だ。鹿島茂の棚で、その名も「パリのパサージュ」のページをめくり、パサージュとはガラス製アーケードに覆われたパリの商業空間のことだったのね、と呟いたり。青土社が「書店では売れない本たち、半額」と書いて、小さな傷のある「あいぬ物語」「スティッチ」などを並べていたのも印象的。
「書評関係以外で棚を持ってくださっているのは、ひたすら本好きの一般の人ですね。もっと言えば、僕と同じで『本が好きな人が好き』という感じの人」と由井さん。ひと棚月額4000円から。「少し空いてます。どうぞ」とのこと。神保町界隈などにあと3軒稼働中でもある。
うちの推し本
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「子供より古書が大事と思いたい」鹿島茂著 「1996年の講談社エッセイ賞受賞作。鹿島さんが子煩悩な父であったら、鹿島茂たりえなかった、と今では思います。この本に出てくる、パリの古本屋を連れ回されている2歳の息子も、アンジェで古本探しから戻ると、車の中で百科事典の上で寝ていた小学生の息子も僕。父がいかに激しい古書収集魔だったか、さまざまつづられています。面白いので、おすすめです」 (青土社 2420円)