創設から半年の中村部屋が“当たらないぶつかり稽古”に挑戦 独自の稽古は弟子の意見を取り入れながら常に変化 – スポーツ報知

中村部屋が19日、東京・墨田区の部屋で来年初場所(1月12日初日、両国国技館)へ向けて稽古を行った。

二所ノ関部屋から6月1日付での独立後は、稽古の2部制、1日3食など従来の指導方針にとらわれない“脱・伝統稽古”を実践。土俵ではぶつかり稽古を行わず、四つに組んだ状態から相撲を取る稽古を行ってきた。独自の稽古が始まって約半年、この日の稽古では四つに組んだ状態ではなく、2人が互いに胸を合わせた状態で片方が押し、土俵際で押し手と受け手が交代、互いに交互に押し合う稽古を行った。中村親方(元関脇・嘉風)は「相撲の基本は押し。押すことが絶対必要なので、押す力をつけようと思って、今日のようにいろいろなパターンで変えている。ぶつかりというより押す稽古をしている。衝撃に強い体を作らないといけないのは当然だが、当たり合う稽古はケガをするリスクもあるし、とにかくケガのリスクを抑えながら鍛えたい。当たらないぶつかり稽古。押しながら体感トレーニングをする認識」と説明した。当初のぶつかり稽古を控える方針に変わりはないが、弟子が必要なことにフォーカスし、柔軟に稽古内容を変えている。

また部屋創設から中村親方が大切にしてきたのが朝食。その朝食にも変化があった。起床後に猛稽古、その後にちゃんこを食べるのが角界の通例。当初は一般的な朝食内容のご飯や卵などを食べてきたが、現在は友風(中村)考案の特製スムージーを全員で飲んでいる。朝食が特製スムージーに変わった経緯について友風は「朝の用意と食事をしてトレーニングまで1時間くらい時間がかかっていました。中村部屋にはちゃんこ番がいないので、全員で朝食を準備して稽古をします。少し力士に負担があったので、どうしようかと親方と相談して『自分は朝に必要な栄養素を全部入れたスムージーを飲んでいますよ』と話して、『それいいね。みんなでスムージーを作ろうか』となりました。ミキサーに物を入れるだけなので、スムージーになりました」と話した。親方が力士たちの意見を取り入れながら、時には変化を加えている。

力士の意見が取り入れられやすい環境についてと友風は「他の部屋と大きく違うところはそこです。こうしようと親方が決めるのではなくて、親方が『こうしたいんだけど、どう思う』と力士側に意見を聞いてくれるので、僕らの意見ものんでくれる」と語る。その言葉通り稽古場での笑顔は絶えず、互いに話しやすいような弟子と師匠と距離の近さが伺えた。

部屋創設から約半年が経過したが、中村親方は「手応えは一生ないと思う。今日も稽古をしながら、これで本当にいいのかと思いながら稽古していた。これで本当に強くできるだろうと思ってはいない。強くしたいとは思っているし、みんなに強くなってほしいけれど、これで本当に強くなるのかなと疑いを持っている。私もこの相撲界のやり方で関取になれたし、70場所以上関取にいれて、親方にもなれた。その結果が出たのはこのやり方でやっていたから。だからと言ってこのやり方でみんな強くなればいいけれど、でもこのやり方で結果を出せなかった人もいるかもしれない。やり方云々の前に、とにかくこういうことやらせたい。とにかくこういうことをやったら強くなるんじゃないかということを、それぞれの特性やこういうことが足りないんじゃないかと考えて、試行錯誤というよりも模索しながらやっているから、居心地はよくない。手応えなんて全くないし、マニュアル本があったら、楽だけれど面白くない。一生手応えはないと思う」と振り返った。

部屋の今後については「それは見えてきた。管理栄養士を入れて、ご飯を作ってもらう。アジリティの専門家を呼んできて、その人にコーチをしてもらう。力士はご飯を作ったりしない。力士は体を休めて、相撲が強くなる環境を作る。稽古をして、トレーニングしてという環境が整う部屋にしたい」と語り、師匠と弟子が一帯となって築き上げられる中村部屋が角界にさらなる新風を吹かせそうだ。(大西 健太)

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